子どもの頃のトラウマ、ユニコ魔法の島へ
手塚治虫原作「ユニコ〜魔法の島へ〜」
この映画は小さい頃VHSに録画したもので何回も観た大好きな物語です。
「ユニコ」は第一作目もすごく好きなのですが、この続編はかなり色合いが濃くなっています。
いわゆる「悪役」であるククルックがすごく不気味で怖い。
子ども心にものすごくトラウマチックな衝撃を受けました。
見た目も動きもセリフもやることも何もかもが怖い。
人間をどんどん生き人形にしていくところは悪夢に出るレベル。
ククルックの行動の原動力は「人間への恨み、怒り」です。
憎しみの気持ちそのものがククルック。
手塚治虫の作風のひとつである「常に形が一定しないで、いろいろなものに変わる」ククルックの動きはなんともクリーピーで嫌悪感すら覚えます。
血も涙もない悪行をはたらきながら、ときどき楽しんで人形を愛でているところすら気持ち悪い。
そして、人間に嫌われると喜ぶ様子を「失礼だけど不気味だと思うわ」というチェリーの言葉に狂喜乱舞する様子もとても怖いです。
完全に主人公ユニコを食ってしまうパンチあるキャラクターです。
それに対して、ユニコはずっと決して揺らぐことがない愛の存在として描かれています。
どんなに一人ぼっちになっても人を愛することを諦めないユニコ。
ユニコとククルックのラストはただ美しいの一言に尽きます。
あんなに醜い悪役なのに、ただ美しく涙が出てきます。今ではククルックは自分が知る限りで最も美しい悪役のうちのひとりです。
「おまえが悪いのさ。やさしいことを急に言うから変になってしまった。あたしの魔法は恨みの塊なんだよ?人を憎むからこそあたしは強いんだ…」
小さい頃、絶望するほど怖かったククルックのラストを見たとき「なんだ、呆気ないな」と思っていました。「優しくする、たったそれだけ?簡単じゃん」と思ってた。
でも、大人になるとその難しさがよくわかります。
心を蝕むほど、その人のすべてを変える痛みと苦しみに本当の意味で寄り添えるのは、優しさなのだとユニコが教えてくれる気がします。
難しいことはさておき、子どものこころに戻ってみたい。そうすると傷つきを癒せるのはやっぱりたったひとつ、人の優しさや愛に触れることだけなのかなと思います。
恨みが強ければ強いほどそれを受け取る相手も辛く傷つくから、愛で接することはそんなに容易いことではないなぁと日々痛感します。
でも、子どもの頃は「なーんだ、優しくしてみんなで仲良くすればいいだけだ、簡単なことじゃん!」って思ってたはずなのです。
たぶん、今の私を作り上げる土台の一個になっただろうなと思うほどこの作品は幼かった私に強烈なインパクトを与えました。
生き人形のシーンがとにかく不気味で怖くて仕方なかったので。本当に夢に見ました。後ろで奏でられているフルート演奏が美しいのがまたより一層、不気味さを引き立ててる。
怖くて仕方なくてすごく強烈な記憶として残った点がよかった。
そして、大人になって振り返って出会えてよかった物語だなーと思っています。
あと、ただただユニコがかわいい。
ユニコーンになって飛ぶシーンも普通に泣けます。