フェミニンの難しさ
すごく久々に服を買った。
サマーニット(アイボリー)とインナーのタンクトップ(ブラック)とスカート(ちょっとだけ光沢のあるサテン系のブラウン)だ。
このラインナップだけを読んでも我ながらものすごくフェミニンな感じである。
ちょっと恥ずかしい気もするが兎にも角にも私は垢抜けたかったのだ。
調子に乗って300円均一のお店に行ってゴールドのアクセサリーなんかもいくつか買ってしまった。
これら何点かはポイントで支払ったから実質タダだ。
本日の大収穫にウハウハして鼻息荒く帰宅し、ひとっ風呂浴びるその前、化粧がまだ残っているうちに袋からむんずと獲物を掴み取る。
ゼエゼエ言いながら全て着用して勇み足でウヘヘと鏡の前に立つ。
アレ?
…アレレレ???
なんだこの、「違う、コレじゃない」感は。
部屋の照明が暗いせいだろうか。
ものすごく老けて見える。
お店で見たときには
「なんてゴージャスな私!大人っぽい!いよっ、出ました!セクシーフェム姉さん!」と呆れるほど過大な自己評価に酔いしれていたのに、家で着たらこれだ。
このパターンは過去にも何度か経験がある。
よく見るとお店で見たときは綺麗なアイボリーだと思ったサマーニットはくすみ系ベージュに見える。
ざっくりしたゆったりめのシルエットも相まって背の小さめな私が着ると肩の丸さが目立ってしまう。そのためすごく田舎くさく見える。
待てよ待てよ、化粧が崩れてるだけかも、前髪もちゃんと巻いてみよう。
部屋だからヒールなし、裸足なのがいけないのか…?
色々試してみるも結果は撃沈。
いや、リップが濃すぎるのだろうか。これではフェム姉さんどころか舞台でよく観る場末のホステス役の衣装のようではないか。
誤解のないよう言っておくが商品自体はとてもよい。
商品はよいのに合わせ方と着る側に難があるのだ。
いや、厳密には私自身もいくらか着飾ればたぶんそこまで悪くはない素材だとは思う。
詰まるところそれらの良いところを何も生かせていない。
着こなせていないということである。
これは着る相手を選ぶ強敵をわざわざ手に取り購入した私の私による私のためのチョイスミスなのだ。
もうショックすぎて自分でも何を書いているのかよくわからない。
とにかくゼロ百で言えば百で選んだ私の自己責任という訳だ。
改めてニットだけを手に取ってみる。
骨格的にこの形はまったく似合わないことをどうして一瞬でも思い出さなかったのだろう。
ゆったりトップスのサマーニットはかなりイカした姿勢のよいナイスなお姉さんでないとただのなで肩強調にしかならないのでは…。
少なくとも私の体型には似合わない。
色の選び方もちょっとアレである。
お店で店員さんに褒められて鼻の穴を膨らませその気になってしまった有頂天な自分に目を覚ませ!と冷水を浴びせに行きたい。
店員のお姉さんは何も悪くない。
私のチョイスを笑顔で肯定し続けてくれた。
選んだのは私、すべて間違いなくこのワタシ…。
気を取り直そう。やはり部屋が暗いだけかもしれない。
うちは照明がアンバーでダークなのだ。
せめてこういうところだけはオシャレぶって横文字で言わせて欲しい。
万に一つ、明るい天気のよい日に着れば舞台の場末のホステスキャラから日中の芋女くらいには変化できるかもしれない。
モチベーション的にはどう足掻いたって荒んだ場末からの芋なのでそんなには上がらないだろうけれど。
それにしても最近の流行は手ごわい。
くすみカラーはベージュ、パープル、薄い黄緑と顔色を殺しにかかってくるものばかりだしシルエットがとにかく難しい。
自分が試すとビッグシルエットなんだかただ膨張して見えるだけなんだか最早よくわからないものばかりだ。
そんなに服を買う機会がなくなってしまったのでもともとないセンスがさらに奥底に眠ってしまい、たまに買うとこのザマである。
次に晴れる日に希望と色々を託して、今晩はこの行き場のない思いを胸に「垢抜けとはなにか」を思案することにしようと思う。
いや、もともと抜けているからこれ以上抜けるものなどないのだった。
フェミニンの試練はしばらく続く見込みだ。