数学の先生
私は数学が大嫌い。
簡単な算数すら苦手。
数の概念がいまいちよく理解できない。
苦手意識と焦りを感じるともっとできなくなる。
国語、歴史、外国語の授業は大好きだったのに、数学はいつもべらぼうにだめだった。
えんぴつが、いや思考が止まってしまう。
一生懸命授業に臨んでも
「ナンノコト?宇宙のハナシ??」ってくらいポカンとしてしまう。
そんなこんなで高校の数学のテストは100点満点中いつも40点台、よくて50点だった。
そこそこ真面目な生徒だったので先生の話は一生懸命に聞いた。
板書を写してなんとか数字の列と脳内認識をくっつけようと四苦八苦した。
結果、どんな時でもちんぷんかんぷんだった。
そして高二の夏、ついに私は赤点をとった。
夏休み前に先生は私に「数学に対する思いを作文にして書きなさい」と課題をくれた。
私はいかに数学が嫌いかを書いた。
小学生の頃からどんなに努力しても算数が理解できなかった。好きになろうと頑張っても全くわからない。答えが一つしかないからプレッシャーを感じる。
もっと理解できたらいいと思う。
そんな感じのことを書いた。
作文を返されると、名前の横に「A -」と表記がありレポート用紙の文章全体にはなまるがついていた。
なんだかすごくうれしかった。
現実は厳しいので通知表は落第一歩手前の成績となった。
危なかった。
今でもあの先生は物静かで優しい印象と共に思い出す。
授業が終わったらノートとシャープペンを持って先生に質問しに行っていた私。
毎回ではないけど試験前は赤点を取りたくない一心で焦って教壇や職員室に聞きに行っていた。
どこがわからないかもわからない私が質問すると毎回必ず少し「参ったな…」という顔をしていた先生。
こんなにわからない生徒もあまりいないと思うので当時それも当然だなと思っていた。
「アイツ、また来たよ…」と思うときもあったかもしれない。
けれど毎回付き合ってくれた。
劣等生だったけどお世話になったなと思う。
数学は今でも大嫌いだけど、あの先生でよかった。
私の好きな、夏の思い出のひとつ。