好きだったあの子との帰り道
学生のとき、好きだった子とはじめて制服姿で桜の続く道を一緒に帰ったことを思い返している。今でもすごくきゅんきゅんする。
誰かに見られたらどうしよう、という気持ちと、ただうれしい気持ちで舞い上がってしまって、でもその子に笑ってほしくて、私はただいろんな話をした。
その子とはずっと同じ帰り道だったけど、ふたりで一緒に帰ろうねとは言えない何かがあって、すごくもどかしかった。
だけどその日は、放課後の教室で進路の話をしていたか何かのとき、流れで「一緒に帰ろっか、帰りながら話そうよ!」と自分から言い出したのを覚えてる。
胸は今にも張り裂けそうにドキドキして、ほっぺと首あたりがぽっぽと熱くなった。
その子は「うん」と言って、「自転車取ってくるね、正面玄関で待ってて」と言った。
この時が一番、心臓が高鳴った。同時に不安になった。現れないってことはないだろうけど、一緒に帰るとなったらなにを話したらいいんだろ?急にふたりで黙り込んじゃったりして気まずくなったりしないかなぁ。
でもそんなことはなかった。
私が冗談を言うといつもみたいに笑ってくれたり、なにかに驚いた顔をしたり、色々答えてくれるときの表情がいちいち可愛かった。
目が合うと息が止まるくらいドキッとした。
桜が満開のときだった。
風が吹くと結んだ髪が揺れてすごく綺麗だった。ちょっと癖っ毛でふわふわした髪だった。
そして、ほくろがすごく色白の肌に素敵に映えてる子だった。目が澄んでいてすごく綺麗だった。
自転車をわざわざ押して歩いてくれるのがうれしかった。
連絡先もわからなくなったあの子、きっと元気にやってると思うけどどんな素敵な人になったんだろうな。
幸せな人生を送ってますように。
私の思い出の1ページ。